[レポート] 行政プロダクト開発の現場の話 #pmconf2021
2021年10月26日(火)、プロダクトマネジメントに携わる人たちが共に学び、切磋琢磨するイベント『プロダクトマネージャーカンファレンス2021』がオンライン形式で開催されました。
当エントリでは、ブレイクアウトセッション『行政プロダクト開発の現場の話』の参加(視聴)レポートをお届けします。
目次
セッション概要
セッション概要は以下の通りです。
行政プロダクト開発の現場の話
[登壇者]
・宮部 麻里子氏(東京都 デジタルサービス局戦略部戦略課 主任(ICT職))
[セッション概要]
行政は非連続な環境そのもので、社会情勢によってプロダクトへの要件や優先度は変わります。その中で「何をつくるか」を考え続けるのは非常に難しいことですが、プロダクトが正しく目指す価値を生み出せたとき、その社会的意義は非常に大きいものとなります。
コロナ禍に経産省で補助金申請システムのプロダクトオーナーを務めていた経験を中心に、行政プロダクト開発の現場で感じたことをお話します。
(※以上、公式サイトより引用)
セッションレポート
はじめに
- 自己紹介
- 2018年6月末で前職(電力系システム子会社)を退職し、翌7月より行政で働き始める
- 行政遍歴
- 2018年07月〜2021年03月
- 経済産業省 情報プロジェクト室 デジタル化推進マネージャー(任期付非常勤職員)
- 2021年04月
- 東京都デジタルサービス局 ICT職 職員
- 2018年07月〜2021年03月
- セッションで伝えたいこと
- 行政のデジタルシフトは今が黎明期
- 是非沢山の人に興味を持ってもらい、色々な形で参画して欲しい
- 発表にあたり...
- 今日お話出来るのは「公表されていること」に限られます(公務員は法律・条令に従い行動する義務がある)
今、行政で起きていること
- 2020年のコロナ禍におけるデジタル敗戦を切っ掛けに、行政のデジタル化が1丁目1番地の施策となった(2021年デジタル庁設立へ)
- デジタル・ガバメント実行計画の初版は2018年にはスタートしていた
- 自治体でも、2021年に地方公共団体情報システムの標準化に関する法律が出来る
- 地方自治体の現場では人口減少と住民サービスの多様化によりデジタル化による業務効率化が必須と考えられるようになる
行政プロダクト開発の現場ってどんな感じ?
- 「行政プロダクト」に関する皆さんのイメージって...?
- 失敗出来なさそう
- 開発に当たって色々な制約がありそう
- ウォーターフォールでがっちり開発してそう...
- etc
- 行政もチャレンジを始めています
- 経済産業省 jGrants(補助金申請システム)
- jGrants ネットで簡単!補助金申請 | jGrants
- 補助金の申請フォームだけでなく、受付後の行政側のフローも含めて全てのフローをオンライン化出来る
- 9省庁21自治体が活用を開始または予定(2021年06月時点)
- 氏はこのプロダクトオーナーを担当
- チャレンジしたこと
- 民間ICT人材をアサインし、省庁側の体制を強化した
- アジャイル型の開発プロセスを実践
- 優先度の変更や計画の見直しに柔軟に対応出来る必要性を感じ、採用に踏み切った
- 要件が変わった一例
- 当初:中小企業が補助金申請に掛かる時間を減らす目的だった(働き方改革関連法の対応)
- 現実:コロナ禍により「素早く補助金を立ち上げられること」の優先順位が高くなった
- 処理を疎結合化し、組み合わせで使える実装にした
- アジャイルで特に工夫したこと:「設計ドキュメントの作り方」
- ユーザーストーリーマッピングにより、実現したい体験を定める
- 「誰が◯◯できる」という単位で以下ドキュメントを作成 (例:申請者が補助金をみつられる)
- 1.なぜつくるのか?(WHY):MRD(Market Requirements Document:市場要求仕様書)
- 2.なにをつくるのか?(WHAT):PRD(Product Requirements Document:製品要求仕様書)
- 3.どのようにつくるのか?(HOW):DevSpec(開発仕様書)
- ※1〜2はオーナー側が執筆、2〜3はベンダー側が執筆
- MRDをオーナー側が執筆する際、IssueやGoal、またそれが実現した時にどんなシナリオが実現するかを執筆
- 「どんな機能が欲しいか」では無く「どんな価値を提供したいか」をプロジェクトメンバーに共有
- 「誰が◯◯できる」という単位で以下ドキュメントを作成 (例:申請者が補助金をみつられる)
- ユーザーストーリーマッピングにより、実現したい体験を定める
なぜ行政に残ることにしたのか
- 任期が切れた時点で民間に戻る事も考えたが、結果的に行政に残ることにした
- ポジティブな理由としては「(行政の仕事に)面白みを感じていた」から。
- 後世に残る仕事:行政DXのベースとなるルールやプラットフォームをつくるタイミングで携われている。
- プラットフォームなら10年
- データ(ベースレジストリ)ならば100年使う世界
- 課題意識:
- 少しの工夫で大きく変えられる領域がまだ沢山ある
- 先進的な民間企業に比べて10年20年前の課題に取り組んで要るような状況かもしれないが、これまで取り組んだノウハウを活かせられる面も多い
- 後世に残る仕事:行政DXのベースとなるルールやプラットフォームをつくるタイミングで携われている。
- 日本の役所にはICT人材が少ない
- 行政はまだ「システムを正しく発注する能力」が不足している
- プロダクトのcoreやwhyを正しく定義し、プロダクトの価値にコミットする人材が必要。内製化は次のステップと考えている
- 現在、色々な方々が民間から参入している状況
- 東京都でこれからやろうとしていること
- 行政DXについては「何もかも出来る可能性に満ち溢れているけど、パターンがまだ決まっていない」
総括
- 行政のプロダクト開発でも色々チャレンジをしている
- 行政のデジタルシフトは今が黎明期。デジタルを活用して改善出来ることは山程ある
まとめ
という訳で、プロダクトマネージャーカンファレンス2021のセッション『行政プロダクト開発の現場の話』の視聴レポートでした。